解決事例(訴訟事案のみ)

 当事務所では、最善なご提案をします!
当事務所では、裁判外解決で見込まれる結論と訴訟で見込まれる結論の範囲を比較して、訴訟をやるべき場合には積極的に訴訟をしています。

訴訟 or 示談?

他の事務所のホームページには、裁判外の示談の事例を多く掲載しているものが目立ちます。
確かに、弁護士が受ければ裁判外の示談であっても、かなりの増額となることが多く、私自身も裁判外の示談で解決している事件も少なからずあります。しかし、裁判外解決では弁護士の力量による差はほとんど生じません。

訴訟を避ける弁護士とは?

私は他の事務所に依頼中の方からのセカンドオピニオン的な相談を受けることも少なからずありますが、相談事例の中には訴訟をやるべき事案で 弁護士が訴訟を避けている事例が目立ちます。
これは訴訟の手間をかけずに多くの事件を処理したいという弁護士の都合が主たる要因で、特に着手金無料 (低額) の場合は訴訟を避けようとする傾向が強いと思います。
また、訴訟の経験が少なく、知識やスキルが未熟であることや、経験不足のために訴訟での結論の見通しができないとの事情もあると考えられます。

以下は全て私が代理人となった訴訟での解決事例の一部です。
裁判外の示談は含みません。
提案額は、弁護士受任以前に相手方が提案した金額です。
判決額は、遅延損害金込みの金額です。

事例1  腰椎椎間板ヘルニア

提案額 200万円(14級)→ 地裁での和解 667万円(14級)
 自賠責では14級で、訴訟で和解(14級)となった事案です。交通事故による椎間板ヘルニアの発症はしばしばみられます。相手方(保険会社)は医学意見書などにより「すでに事故前に経年変化が生じていた」と主張することが多く、簡単な事件とは言えません。この事件もかなり細かな医学的主張をしました。医学的知識と裁判例の知識のほか、後遺障害認定基準についての問題意識などが必要です。

事例2  頚椎椎間板ヘルニア(むち打ち損傷)

提案額 73万円(非該当)→ 判決 703万円(12級)
 同じ椎間板ヘルニアでも頚のヘルニアは腰とは医学的な捉え方が異なります。上の事件は後遺障害認定手続で非該当とされた事案ですが、訴訟では和解不成立となり、判決で12級と認定されました。医学的な主張だけではなく、症状を裁判官に分かりやすく伝えることも大切であると思います。

事例3  頚部痛(むち打ち損傷)

提案額 33万円(非該当)→ 地裁での和解 236万円(14級)
 地裁での和解(14級相当)で解決となった事案です。私はむち打ち損傷事案で自賠責の認定が非該当や14級の事案で訴訟をして、等級が上がったことが何回かありますが、どの場合に訴訟で等級が上がるのかをはっきり区別することは困難です。裁判官の当たり外れも影響します。
 訴訟で等級を上げることが難しいケースであっても、ご依頼者様が「弁護士費用特約により弁護士費用が全額出るなら訴訟で争いたい」との意向である場合には、その意向を尊重して訴訟を提起することも少なくありません。

事例4  腰痛、両下肢しびれ

提案額 0円(対応拒否)→ 判決(高裁)754万円(12級)
 労災では14級とされたものの、加害者(損保)はかなり早期に治療費の支払いを打ち切り、後遺障害認定手続にも協力しないなど、まれに見る強硬な対応の事案でした。足のしびれについての医学的な主張(足根管症候群との類似性など)が効を奏して高裁で12級相当であるとした判決が出て確定しました。

(名古屋地裁H25.2.6、交民集46巻1号224頁、自保ジ1899号142頁)
(名古屋高裁H25.7.19、判例集未登載)

事例5  腰椎椎弓骨折、両下肢しびれ

提案額 255万円(14級)→ 高裁での和解 730万円(12級)
 自賠責で14級とされ、異議申立でも14級とされ、訴訟で12級とされた事案です。12級の認定基準について数個の裁判例を証拠として提出し、地裁で12級相当とされ、高裁で和解となりました。後遺障害の有無や程度を証明するために医学的知識や裁判例の知識が必要な場合が多いと思います。 

事例6  頚部痛、腰痛

提案額 109万円(14級)→ 訴訟での和解 500万円(11級)
 自賠責で14級とされ、異議申立でも14級とされ、訴訟では併合11級相当を前提とした和解となった事案です。この事故の少し後に別の事故にも遭い、最初の事故後の症状について胸郭出口症候群との診断も受けるなど込み入った事情のある事案でした。

事例7  左小指拘縮、しびれ

提案額 10万円(非該当)→ 判決 318万円(14級)
 自賠責で非該当とされ、訴訟で14級と認定された事案です。小指の拘縮の状況からは12級相当と考えられたのですが、怪我の部位が小指のみに限定されていたため、判決は14級に留めたと考えられる事案でした。

事例8  左脛骨粉砕骨折等、左足しびれ

提案額 815万円 → 地裁での和解1500万円(12級)
 裁判外の示談でも1000万円位までなら増額が見込めた事案でしたが、訴訟ではさらに増額が見込めるため、ご相談の上訴訟を提起し、地裁での和解となりました。症状についてかなり詳細に医学的な主張を行なったのですが、症状固定前にいくつかの検査を受けるように指示していたのも役に立ちました。早期にご相談を受けることができた点がかなりのプラスになった事案です。和解調書で後遺障害等級が12級であることを確認するとの合意をしました。

事例9  手根管症候群(CTS)、両手のしびれ、頚部痛、腰痛など

提案額 112万円(非該当)→ 高裁での和解 5000万円
 長期化した重症事案のため賠償額(高裁での和解)は手根管症候群としては非常に高額です。地裁判決で手根管症候群が認定され、高裁で和解となりました。この時点で交通事故被害者に手根管症候群が認定された判決はほかに見当たらず、この判決が最初であると考えられます。
私の経験からは、手根管症候群は交通事故による発症頻度が低くないと感じます。但し、手根管症候群が主たる争点となる裁判例は少ないです。一方で、胸郭出口症候群に併発する手根管症候群は多いと感じます。胸郭出口症候群は、一般病院では確定診断のできる機器がないことなどから、事故から1年以上経過してから別の専門病院で診断されるという事情が多くみられます。しかも、手根管症候群は胸郭出口症候群の症状として見落とされやすいです。
上の事件では、胸郭出口症候群は発症しておらず、事故から4年半ほど経過して別の専門病院で手根管症候群であることが判明したため因果関係の存否が争点となり、相手方から医学意見書が5通ほど出て手根管症候群の否定や詐病を激しく主張した事案でした。医学的知識が重要な事案です。
地裁判決は、遅延損害金を含めると優に8000万円を超える金額でした。私もさすがに高額すぎる感じがしました。これは地裁での加害者の対応(5通ほどの医学意見書)に裁判官が嫌悪感を覚えたからかもしれません。

(名古屋地裁H16.3.31、第一法規)

事例10-1  胸郭出口症候群(TOS)、上肢のしびれ、痛み、下肢の脱力等

提案額 250万円(14級)→ 判決 2035万円(12級)
 歩行者(被害者)が自転車に衝突された事故により胸郭出口症候群(TOS)となり、手術を受けるも症状が少し改善したのみで自賠責では14級とされた事案です。訴訟では多数のカルテや診断書等が証拠として提出され、加害者側は医学意見書を2通提出して症状を争う主張や素因減額の主張をしましたが、こちらも医学書を多数提出するなどして詳細な反論をしました。その結果胸郭出口症候群を認め12級相当として大幅な増額となりました。
なお、脳脊髄液減少症との診断も受けていましたが、この病名の裁判例はほぼ全部が被害者敗訴ですので、この病名を前面に出すのは被害者に不利となります。そこで、あえて脳脊髄液減少症を重視せず胸郭出口症候群の症状として争いました。
   加害者側の意見書は胸郭出口症候群という疾患そのものを実質的に否定する極端な主張の医師の見解を引用するものでした。この主張をしている医師は私の知る限りこの医師のみですが、多くの医学雑誌等でその主張を繰り返しています。判例集掲載の裁判例ではこの主張を取り入れて被害者側敗訴となった事案もあり、加害者側の新しいタイプの主張として広まることが懸念されます。また、加害者側は脳脊髄液減少症を争点に引き込むべく主張してきましたが、それには乗らず、胸郭出口症候群を争点として争いました。

(名古屋地裁H30.2.23、第一法規、自保ジャーナル2022号53頁)

事例10-2  胸郭出口症候群(TOS)、両上肢のしびれ、痛み、可動域制限

提案額 152万円(14級)→ 判決 2130万円
 幹線道路で信号待ちをしていてかなりの勢いで後続車に追突されて、両上肢の胸郭出口症候群(TOS)となり、両腕が水平より上に上げられず、痛みや大幅な脱力(筋力低下)などが生じた事案です。
後遺障害のために職場では各種の就業制限を受け、配置転換となり軽作業や事務のみとなりました。両上肢の腫脹や皮膚の変化などもありCRPSとも診断できる状況でしたが、胸郭出口症候群(TOS)の診断に留まっていました。加害者側は医学意見書を提出するなどして争い。こちらも医学書を多数提出するなどして争いました。
 判決は胸郭出口症候群を認め、15%の労働能力喪失としました。判決が後遺障害等級を明言しなかったのは、当方の主張(裁判所は等級を認定する必要はなく、実情に応じた労働能力喪失率を認定すれば足りる。裁判所が自賠責を超える等級を認定して加害者の損保が自賠責から回収する額を増やすことは、後遺障害等級の認定実務では被害者に不利に働く。)に沿うものです。
 加害者側の医学意見書は海外文献を複数引用していたのですが、調べてみると意見書での主張に沿うものではありませんでした。別件でも経験しましたが、最近では裁判所を信用させる小技として海外文献を複数引用する医学意見書は少なくないようです。

(名古屋地裁豊橋支部H28.11.8、第一法規)

事例10-3  胸郭出口症候群(TOS)、上肢のしびれ、脱力

提案額 70万円(非該当)→ 判決 1119万円(12級)
 私が相談を受けたのは非該当として70万円の賠償金の提案を受けた時点でした。その時点で胸郭出口症候群が疑われる症状が出ているもその診断を受けていなかったため、私の指示で精密検査を受けてもらって胸郭出口症候群の診断をもらい、その後に異議申立をしたところ、後遺障害が14級となりました。被害者(女性)は上肢の痛み、しびれ、脱力のために重いものを持つ作業や、腕を継続して使用する作業など家事全般が制限された状況にありました。
訴訟では胸郭出口症候群として後遺障害が12級と認められました。但し、仕事はデスクワークのため後遺障害は収入にほとんど影響しなかったため、損害額は12級としては若干少なくなっています。
相手方がかなり強く反論し、訴訟の遅延戦術も取ったため提訴から地裁判決まで3年半ほどを要しました。

事例10-4  胸郭出口症候群(TOS)、上肢のしびれ、痛み

提案額 85万円(非該当) → 判決 494万円
 胸郭出口症候群(TOS)の発症を認定されるも因果関係が否定された事件です。あえてそれを挙げたのは実質敗訴の場合においても相当程度の賠償額の増加が見込まれる事案もあるからです。
 私の経験からは交通事故による胸郭出口症候群の発症頻度は高いように感じます。この疾患は事故から1年以上経過してから専門病院で病名が判明したという事情がほとんどの事案にみられます。専門病院で血管造影や神経造影を受けなければ確定診断できないためです。私が検査を勧めて判明した事案も何件かあります。当初の病院で胸郭出口症候群が見落とされたまま長期間通院を続けると、訴訟において事故が原因で発症したとの証明が困難となります。そのため胸郭出口症候群が事故から生じたと認定した判決は最近の事例しか見当たらず、私の担当した事件の平成18年の判決が最初の判決かもしれません。
 アメリカでは胸郭出口症候群(TOS)患者の7~8割が外傷で発症との報告がある一方で、日本では外傷による発症は1~4割と報告されているのは、医療の格差の影響が大きいと思います。

事例11-1  複合性局所疼痛症候群(CRPS)、右上肢

提案額 207万円(非該当)→ 判決(高裁)2247万円(8級)
 複合性局所疼痛症候群(CRPS、RSD、カウザルギー)の事案では自賠責で極端に低い後遺障害認定や非該当となることが非常に多く、12級以上とされることは非常にまれです。この事件でも右上肢が完全に拘縮して全く動かせないにも関わらず自賠責で非該当となりました。
 この事件では加害者側は数通の医学意見書などで激しく争い、被害者の詐病を主張してきました。この対応も裁判例では普通のことです。鑑定は加害者側の主張と同内容でした。このような鑑定となることも裁判例では多く見られます。損保側と被害者側の情報量の格差のため、鑑定人に関する事前情報が被害者側にないからです。裁判官が鑑定書の内容をそのまま信じ込んで、地裁では敗訴となりました。
 そこで、高裁に臨むにあたって、当職が主治医と交渉して被害者に全身麻酔下での可動域検査を施行してもらい当職がビデオ撮影して証拠として提出しました。被害者の左右の上肢の負荷をバネ量りで計測しながら可動域検査をして、右上肢全体がガチガチに固まって、左上肢の10倍以上の負荷でもほとんど動かない状況を撮影したので、証拠としては十分なものでした。
 高裁は8級としたので右上肢がガチガチになっている状態を理解したようですが、それでも鑑定書や他の裁判例による洗脳が強く影響していました。高裁はCRPSが3つの病期ごとに20種類の必須の症状を出現させるとする説(病期説)を持ち出してCRPSを否定しました。なお、CRPSに必須の症状が1つも存在しないことは医学的には全く争いのない定説です。日本版判定指標からも即座に導かれます。病期説は典型症例のイメージを述べたもので診断基準ですらありません。この訴訟では病期説は被害者も加害者も鑑定書も主張していなかったのですが、裁判所が資料を読み違えて診断基準として判決に利用してしまいました。また、精神的素因を5割としました。
 CRPSのような被害者側敗訴が圧倒的に多い傷病の事案では、このような裁判官の脱洗脳も被害者側の大きな負担となります。裁判官はどこで誤解をしているか分からないため事前に考えられる全ての誤解ポイントを潰しておく必要があります。
 CRPS事案では、加害者側は特殊な主張を繰り出して、被害者の症状を全否定するとの特徴があります。また、問題のある鑑定意見が出されている事案も多く見られます。詳しくは私のブログを参照してください。CRPSの事件では、医学的な知識のみならず、加害者側の特殊な主張への対抗できる知識も必要とされます。
 高裁では、私が受任する以前に加害者(損保)から提案されていた額よりは大幅な増額となり、等級も非該当から8級となりましたが、被害者の実態からはあまりにも不十分で痛み分けのような解決となりました。
 高裁判決が自動車保険ジャーナルに掲載されたのですが、全身麻酔での可動域検査の部分が全て除外されていました。私が第一法規に情報提供したので、第一法規のネット検索ではそれらも掲載されています。

(名古屋地裁H17.8.30、第一法規)
(名古屋高裁H18.5.17、第一法規、自動車保険ジャーナル1665号)

事例11-2  複合性局所疼痛症候群(CRPS)左上肢

提案額 108万円(非該当)→ 判決 4494万円(高裁)
 上記のとおりCRPSの事案では、自賠責で極端に低い後遺障害等級となることが多く、この事件でも左上肢が完全に拘縮して全く動かせないにも関わらず自賠責では非該当とされました。訴訟では多くの病院のカルテが証拠として提出され、加害者側は複数の医学意見書を提出し、被害者の症状や事故との因果関係などを激しく争い、こちらも多数の医学書を提出するなどして反論し、提訴から最高裁で決着がつくまで約5年を要しました。
 裁判例の事例や私の経験では、重症化した上肢のCRPSの事案では、り患していない対側の上肢にも脱力等の症状が生じている方や、下肢の脱力や歩行困難が生じている方も多く、この事案では下肢の脱力等の症状もかなり重度でした。被害者側勝訴の裁判例は判例集に掲載されないことが多いため、第一法規に判例情報を提供しました。
 加害者側が医学意見書を提出してきた事案では、私は「その意見書は資料の読込みから文字の打ち込みまで名義人の医師が単独で行なったのか、それとも補助者がいるのか回答されたい」との求釈明を必ず毎回していますが、加害者側が補助者の有無などを回答してきた事案はこの事件を含めて1度もありません。求釈明の具体例については私のブログの「損保側医学意見書への対処法」の項目を参照してください。

(名古屋地裁H29.3.21,名古屋高裁H29.9.7、第一法規)

事例11-3  複合性局所疼痛症候群(CRPS)

提案額 440万円(12級) → 高裁での和解 9000万円
 この事件は被害者の左上肢が動かない状況にも関わらず、自賠責では12級とされ、訴訟では損保側は医学意見書を用いて症状を否定する主張を激しく行ない、被害者の差病を主張するなどしてきました。被害者の症状は症状固定後も悪化し続け、地裁の時点では左上肢の拘縮が重度となり、両下肢にも症状が波及して歩行不可能にもなっていました。
 当方は医学書などを多数提出し、主治医の意見書等も提出しましたが、地裁では当方の主張はほぼ全て無視され、実質差病の認定となりました。高裁では当方の主張がほぼ認められ、請求額そのまま(9000万円)での和解となりました。
 地裁の裁判官は以前の同種事案で誤った医学的知見を信じて判決を書いてしまった経験があるのかもしれません。CRPS、高次脳機能障害、低髄液圧症候群などによる高額賠償を請求している事案では、それを完全否定するための誤った医学的知見が多数出され、裁判例では騙されているものが圧倒的に多数を占めています。騙されて判決を書いてしまった裁判官にその誤りを認めさせる判断を求めることは困難を極めます。

事例12  頚椎骨折、頚髄中心性損傷、右脛骨折等

提案額 382万円 → 地裁での和解 1000万円
 事故による頚髄損傷で事故直後は両上肢がほぼ使用不可の状況でしたが、リハビリ等により、しびれ・痛みと軽度の可動域制限を残す状況となった事案です。ご依頼者様のご意向もあり、当初は訴訟を避けて日弁連交通事故相談センターの示談あっ旋をしたのですが、仲裁の弁護士が提案した金額が事前にご依頼者様と決めていた最低額を大きく下回ったことから、やむをえず訴訟提起となりました。
 訴訟でカルテや医学書に基づく細かな主張をしたところ、大幅な増額での和解となりました。結果的に事案あっ旋をやめて良かったと言える事案です。

事例13  頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)、四肢麻痺

提案額 574万円 → 地裁での和解 4208万円
 裁判外の交渉でもかなりの増額が見込める事案でしたが、訴訟ではそれ以上の増額が見込めるとの考えで訴訟となった事案です。地裁での和解で解決となりました。
 頚椎後縦靭帯骨化症の事件では、加害者側は極端な素因減額を主張してくることが多く、この事件でもこの点が争点となり、素因に関してかなり詳細な主張をしました。
 素因減額については非常に多くの論文が出されており、平成28年4月時点までの間に私が調べた範囲でも250本ほどの論文、著作があります。素因減額の重要判例や学説の状況については、常に最新のものを押さえておく必要があると思います。

事例14  重症事故、上肢等

提案額 5465万円 → 地裁での和解 8769万円
 事故により片腕を失うなどの重傷を負った事案です。訴訟での解決により増額が見込める事案でしたので、訴訟を提起し、地裁での和解で解決となりました。重症事案で後遺障害等級に争いのない場合であっても、慰謝料や逸失利益、過失相殺などの点で提案額よりも大幅に増えることがあります。この事件では裁判外で示談した場合の想定額よりも2000万円以上増額となりました。

事例15  死亡事故

提案額 3030万円 → 訴訟での和解 4670万円
 過失割合のほか、相続などの争いもあり、訴訟を提起して和解での解決となりました。死亡事案では裁判外の示談に比べて、訴訟での解決額が大幅に増えることは少ないため、示談での解決になじみやすい面があります。
 但し、死亡事案でも慰謝料や過失相殺などの点で提案額から大幅に増えることがあります。また、自賠責の算定基準についての最高裁判決の関係で、亡くなられた方の年齢や収入などの事情によっては積極的に訴訟をやるべき事案もあります。実は死亡事案でも見落としやすい細かな問題点がかなりあります。

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