高次脳機能障害
遷延性意識障害
軽度外傷性脳損傷(MTBI)
頚髄損傷、脊髄損傷、中心性脊髄損傷
脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)
頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)
頚部脊髄症(頚髄症)
視神経損傷
腕神経叢損傷
胸郭出口症候群(TOS)
手根管症候群(CTS)
複合性局所疼痛症候群(CRPS)
反射性交感神経性ジストロフィー(RSD、カウザルギー)
線維筋痛症
頚椎椎間板ヘルニア、腰椎椎間板ヘルニア
腰椎すべり症、分離症
梨状筋症候群(骨盤出口症候群)
足根管症候群
など
医学的専門知識を必要とする事件においては、被害者の実態に比べて後遺障害認定が非常に低くなる事案が多く存在します。上で列挙した傷病の事案の中には、その傾向の強いものが多く存在します。
例えば、CRPS(複合性局所疼痛症候群、RSD、カウザルギー)の事案では、ほぼ全てが実態を無視した非常に低い後遺障害認定とされているのが実情です。この点は私のブログ(名古屋の弁護士による交通事故ブログ)で多数の裁判例を検討してきたとおりです。
脊髄損傷事案においても、事故後にしばらくして悪化した事案や改善と悪化をくり返した事案などで、非常に低い後遺障害等級とされた事案が多く存在します。 胸郭出口症候群(TOS)の事案でも実態を無視した低い後遺障害等級とされることが普通になっています。
しかし、医学的専門性や低い後遺障害認定のため訴訟等の見通しが立ちにくいことから積極的に受任する弁護士は少ないように思われます。 私はこのような事件も積極的に受任し、多数の事件を経験してきました。
当事務所には、医学書が500冊以上あり、医学大事典を初めとして、カルテ翻訳用辞書、各種専門書、専門の月刊医学書、整形外科、ペインクリニック、病理学、薬理学、MRI、筋電図などの専門書も取り揃えています。
医学的な争点がある事案でも医学的なことは医者任せで、医学的な専門知識を得ることに不熱心な弁護士は少なくありません。交通事故を手がけている弁護士の大半は医学専門書を10冊以上所持していないのではないかと思います。
私は、自分が納得するまで医学専門書の入手と情報の獲得に努めてきました。1件の訴訟のために40冊以上の医学書を購入したこともあります。医師任せという不安定な状況では医学的な争点に対して本当の意味での対応はできないからです。患者の訴訟にまで協力的な主治医はごく少数です。
頚椎捻挫の診断を受けた簡単に見える事案であっても、実は他の疾患を併発していることは少なくありません。
「どうしても痛みが治まらない。」という相談者の訴える痛みや症状を注意深くお聞きすると、私が過去に 経験した事例と同じであることから、相談者に専門病院での精密検査を勧めて、本当の病名が判明したことが何回かあります。
これらの相談者のほとんどは私が弁護士会から割り当てられた交通事故法律相談で担当した人で、 それまでの治療に疑問を持って相談に来られた方ではありません。従って、本当の病名を知らないまま痛みを抱えている方や、十分な精密検査を受けることがないまま 症状固定となっている方は少なくないと思います。
公刊されている裁判例の事案でも、症状固定後に別の病名と診断されたものや、訴訟での鑑定で別の病名(例えば、複合性局所疼痛症候群、胸郭出口症候群など)と判断されている事案は決して少なくありません。
多くの方の相談を受けていると、同じ傷病名でも病院ごとに受ける検査の内容、治療内容、処方される薬、診断への慎重さなどに違いがあることに気付きます。これは病院の規模、検査機器の有無、医師のキャリアなどの違いによるものであると思います。
しかし、ほとんどの患者さんは他の病院でどのような検査や治療や投薬や手術が受けられるかの情報を有していません。 私は医療行為について何が正しいのかを判断できる立場にはありませんが、他の方が「あの病院は良かった」「あの薬はよく効いた」と述べていたことを伝えることはできます。
私は相談に来られた方や依頼をされた方に対しては、できるだけ患者間で情報が共有できるようにサポートしたいと心がけています。
私の経験では交通事故事件のなかには、医学的な知識が必要な事件は少なくないと思います。 冒頭に列挙した傷病はすべてその傷病の知識が必要です。
それだけではありません。長期間の通院ののちに本当の病名が判明した場合には、 それが事故によって生じたことの証明をしなければなりません。
訴訟に備えてどのような精密検査を受けておくべきかということは、医学知識なしには判断することはできません。 その傷病と鑑別を要するほかの傷病の存在などの知識も必要です。
訴訟では、加害者側(保険会社)は、傷病の存在を否定し、事故との因果関係を否定することが通常であり、 そのための特殊な医学的主張(ウソ医学)は多数に上り、ウソ医学を支えるための特殊な理屈も巧妙な形で繰り出されてきます。 私が訴訟等で遭遇した加害者側の意見書(約70~80通)のなかで本当に名義人の医師が作成したと信用できたものは存在しませんでした。 裁判官を騙すためのウソ医学に特化したプロのゴーストライターが作成しているのではないかとの疑いを持たざるを得ないものが非常に多いのが実情です。 これに対抗するためには医学的知識のみならず、ウソ医学の見分け方にも精通する必要があります。
判例集に掲載されている事案のなかには、被害者が重度の後遺障害を残していたにも 関わらず、医学的な主張が十分になされていないために、保険会社側の主張に敗北して 後遺障害が認めらなかったものが多く見られます。それどころか重度の障害があるにも 関わらず詐病であるとの判決を受けたものも少なくありません。
裁判例の上では、訴訟で実質的に詐病と認定された事案の圧倒的大多数は詐病ではありません。保険会社の顧問医などの主張する医学的主張に技術的に対応できなかったために傷病の訴えが認められなかったように見えます。
私は医学的な争点が問題となる事案を多く受けてきましたが、傷病が重度になるほど 請求する賠償額が大きくなるため、保険会社側の抵抗は激しくなり「この被害者は 詐病である。事故とは無関係である。」との主張が毎回のように高度な医学知識を駆使して提出されます。この場合には医学知識だけではなく、訴訟での有効な対抗策を知らなければ、障害に見合った賠償額を獲得することはできません。
私が経験した事件では詐病との主張を退けるために、主治医に依頼して被害者(依頼者)が全身麻酔のもとで検査を受け、私も手術室に入り検査の様子をビデオ撮影したこともあります。この種の事件では医学知識だけではなく、後遺障害の実態を正確に裁判所に伝えるための知識や経験も必要です。
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